気付けばなぜか違う場所に連れてこられた私。
見渡せば茶色と黒を基調にした個室。
私はその中央に設置されてる黒革のソファに座ってる。
視線を横にずらせば〝鬼口陽人専務〟と書かれてある札を目にして、ただただ感心していた。
ドアが開く音に背筋が伸びた。
「どう?少しは落ち着いた?」
「え、あはい。……っ!?」
ちょ、チョット!?ナニ!?
てか、近い!近いよね!?え?私の感覚オカシイ!?
なぜか私の隣に座る鬼口陽人。
その横顔にキュンしてるだなんて口が裂けても言いたくない。
もーーっ、なんで隣に座ってるの?!
はぁ、息苦しい。もう心臓止まりそ。
「部長なんだってな。おめでとう」
「あ、ありがとうございます」
くっ、この顔は反則っ。
「まさかお前が部長になるなんてな。大変だろ?俺も大変だったわー。特にお前の面倒みるのが」
……訂正しますね。
なんも変わってない!
悪魔みたいな笑みを向ける部長に睨んだ。
なんで私はこの人のことが好きなんだろ。
分かんない。
でも、どんな部長でも心を奪われてしまってる自分がいる。
不覚だ。ほんとため息しか出ない。
私、上司相手に凄い態度とってきてるよね……今更すぎる。
でも、一言言いたい!
この際だから、言ってやる!
「部長、やっぱり私のこと──っ!?」
部長の人差し指が私の唇に当たった。
「違うし。もう黙っとけよ」