お昼。今日のノルマはなんとかクリアさせた私は懐かしの場所へ向かった。
30階。
広々とした空間に半透明のガラスに囲まれた部屋が3室見える。
その手前が私が4年間過ごした部署だ。
このドアがたまらなく愛しくなった。
そっと音をたてないように開ける。
中はガラリとしていた。
「なんだ~。みんな留守か」
小さく呟いた声は静かに響いた。
私が座っていたディスクに立ち寄ってみると思わず笑った。
「ここ、仁田くんなんだ」
相変わらず綺麗に整頓されてるディスクに感心した。
ふと目線が止まったのはパソコンの隣に置いてある写真立て。
そこには仲睦まじく寄り添う男女。
向日葵畑を訪れたのだろうか。そんなことを微笑ましく思った。
よかった。仁田くんも幸せで。
私を好きって言ってくれた彼とは、1ヶ月だけお付き合いした。
とても私を想ってくれてる彼にたくさん甘えさせて貰った。
でも、それ以上は私が求められないと判断した結果、私は彼を傷つけてしまったんだ。
あの時の仁田くんの表情は忘れられない。
ううん、忘れたくない。
こんな私を好きって言ってくれた彼だから。