同僚との飲みは楽しい。
でもやっぱり話の行方はキラキラした方へ行くわけで。
とてもじゃないけど、出来ればそんな話はしたくないし、聞きたくもない。
もう過去を思い出したくないから。
あの頃の思い出も想いもキッパリ忘れようとしてるから。
そう思ってるのに逃げきれないのが現実。
昨年から違う勤務地で活動をしてるから、この子たちは知らない。私が部長に恋していたこと。それから、失恋したこと。
新しい勤務地で部長の名前を耳にした時、物凄くドキドキしたのを覚えてる。
やっぱり有名みたい、あの人は。
ルックス良しで、無口で、無愛想、鋭い瞳に、何を考えてるのか分からない残念な人と。
聞いた時は笑ってしまった。
部長のこと分かってないなぁって。
あんな人だけど、とても優しくて、可愛くて、整理整頓苦手で、とても温かい心を持った芯の強い人ってことを。
そんな鬼口陽人を私はいつの間にか恋に落ちてた。
嫌いな人だったのに。