「え、あ、はい。……終わり、ました」
さっきの強気な私はどこへやら。
背中に固いものが当たった。
手で確認すれば壁だと気付く。
ヒェ~っ。
こ、怖い。真凛ーーたすけてっ!
「俺が黙って行くとでも思ったの?」
……行きそうですよ?
「俺が〝他の女〟と食って悪かったな」
ピクッと頬が痙攣した。
「まさか、さっき言ったこと覚えてないとか言うなよ?」
「お、お……ぅ」
うっわー……私ばっかじゃないの。
なに、そんなこと言ってたの!?
や、やだなあ、冗談に決まってるじゃないですかー。
「は、ハハハ」
部長の目を見ながらカニ歩きでドア口へ急いだ。
後ろ手でドアノブを探るけど、こういう時に限って掴めない。
もう変な汗が噴きでてしょうがない。
なんか、懐かしい気もする。
このピンチ感。あの電話事件。
部長は憶えてるかな。
なんとなくだけど憶えてくれてればいいな。