「おはようご、」
「遅い」
その声にビクリと震わせ、前を見た。
え。う、ウソ。
「遅い。何時だと思ってるんだ」
ピシャリと放たれた冷たい声。
私は唾を飲み込んだ。それとみえない汗が次々と吹き出る。
なんでいるの。え、まだ時間じゃないでしょ!?
だって、ほら、まだ58分!
「おい、聞いてるのか?」
「聞いてます」
「俺は15分前には着いてるよう昨日伝えたはずだよな?」
「…………」
……あは。やばいー。忘れてたぁ。
ええ、言ってました。ちゃんと聞いてました。
『明日は在庫切れの発注やら、お客様からのご要望での商品開発会議をするから開始15分前にはここに来てるように』
これは怒られてもしょうがない。
うわー。最悪だー。
寝坊するし、ヒールで猛ダッシュしちゃったし、何より苦手な部長に冷たい目線送られるし……。
今日はツイてないのかもしれない。
「すみません。以後気を付けます」
そう頭を下げると部長はその場を離れていった。