「風邪、ですか?」
横から小声で尋ねてくる仁田くん。
それに首を振った。
違うの、ただ寒がってるだけなの。
すると、体が温かさに包まれた。
微かにシトラスの香りがする。
それは一番近くで見てきた彼、仁田聖(ジンタ ショウ)くんのジャケットだった。
「先輩、かけてていいですよ」
「え、あ、うん。ありがとう……」
仁田くんは部長にひと声かけると、席を離れて空調をいじった。
なんか急に申し訳なくなる。
後輩にやらせてしまった感というか……なんというか変な罪悪感。
戻ってきた彼に何気なく申し訳ないことを伝えると、「大丈夫ですよ」だなんて返されてしまうもんだから、素直にありがとうと伝えた。