「なに、まだ選んで……」
うわ……。
もうやだ。なんで会いたくない時に会うの?
部長の視線は私の手元をみて言葉が途切れた。
「こ、これは自分ので」
そう言うのが精一杯だった。
だってこんな馬鹿すぎる間違いは恥ずかしい。
「い、いま部長の、」
「はぁ……、そんな嘘つかなくていーよ。これ俺貰う」
そう言って私の手から抜き取った。
多分、私の顔は思いきりマヌケているんだろうなあ。
ほら、部長の瞳に映ってる私は口をポカーンと開けてもろ馬鹿さが出てる。
私ってなんでこんなに情けないんだろう。
名前負けしてるよね。
姉田美紅(アネダ ミク)。
名前からして強くてしっかりしてて、完璧女子って感じするのに。
真逆だ。
特別可愛くも綺麗でもない。
平凡でどこにでもいるような私。
それは別にいいんだ。ただ、理想の自分に近付けなくて悔しいの。
なんでかなー。とにかく悔しい。
馬鹿にされるのはもう慣れたけど、悔しい。
悔しいんだ。