「公美らしくないじゃん」
もっとめげずに立ち向かう姿が私は好きだよ。
胸張って、好きなことにはとことん突き進んで、だからいつもキラキラしてて。
でも、今の公美は……。
「私、嫌いだな。今の公美」
微かに息を呑むのが聞こえた。
《……なによ、私のことなんか知らないくせに。自分が上手くいってるからって調子のんないでくれる》
声が低くなった。
久しぶりに聞いた、怒った声。
でもその声は初めて自分に向けられてる。
《どーせ馬鹿だなー、弱っ、可哀想……って思ってるんだ。あっそ、勝手に……っ嫌ってればいいじゃ、》
嗚咽を漏す彼女の苦しみ凄くわかる。
私だってつらいもん。
そんなの想像してた以上だった。
でもさ、親友がこんな辛そうに泣いてて馬鹿にする人間どこにいるのよ。
だから言葉を遮った。
「上手くいってる?笑わせないでよ。私だってねー毎回毎回怒られてるんだよ、頭グリグリされるし、冷たい目で見られるし!さっきなんて頭鷲掴みされてねー!っ」
《ぶはっ》
思わず耳からスマホを遠ざけた。
公美の笑う声が大音量で響いたから。
てか、待って私。なんか、あれ?
なにこれ、すんごく恥ずかしいんだけどっ。
《あははははっ、ちょ、人が真剣に悩んでるのにっ、もうやめてよ、くふふっ》
「や、ちょ、ごめん!そんな笑わないで恥ずかしい!」
もー、なんで私ってこんなバカなのー?
バカすぎて笑っちゃう。もう笑ってるけど。
《はー、なんかどうでも良くなっちゃった。ありがとう美紅》
「え、は、ども?」
《美紅ー、今度会お?もう顔みたい!》
「いーね!来週の土曜空いて……ハッ!」
慌ててスマホ画面を見た。
や、ヤバい。これはもうかなりのレベルでヤバい。
また鷲掴みされる!もしくは強烈なグリグリ!
「ききき、きみー!ちょ、ごめん!私会議抜け出してきたの忘れてたっ」
《は!?何やってんの!馬鹿じゃないの!?》
「うんそうなんだけど、電話が公美だったから、つい!」
《……ばかねー》
それを最後に会話が終了した。
でも微かに聞こえたよ。ありがとうって。
「よし!私も頑張るぞ!」
鏡に向かって腕を突き出した。