「ていうか白石さんは?こんな時間まで残るって、どれだけ課題出されたの」



心配そうな様子をみせる宇多くんが、がらがら、と教室のドアを開けて、今度は教室の中に入ってきた。



「前座ってもいい?」

「え、あ、どうぞ」

「誰のか分かんないけど、失礼します」



私の前の席に向かって律儀に軽くお辞儀して、

身体をこちら側に向けた宇多くんが、椅子にまたがった。




「あー文系いまここなんだ。俺もここ苦手だった。けど公式うまく活用したら案外楽に解けるよ」

「……宇多くん分かるの?」

「分かるよ。理系なめんなよ〜」



いたずらっぽく笑った宇多くんが、私のほぼ白紙に近い二枚目のプリントの隅に、見たことない公式をすらすらと書き始めた。


そうか。宇多くん、6組だから理系なのか。

頭いいんだ。感心する。




「できました」



よそ見してたら、宇多くんってば鬼ムズ問題を秒で解いてみせた。



「えーすごい。合ってる!なんで分かったの」

「この公式使ってみて。白石さんも解けるよ絶対」

「初めて見た、この公式」

「えーほんと?」