昼休み。いつもの所で柊碧人は待っていた。壁に背をもたれ腕組みをする。いかにも待ちくたびれたといわんばかりに、わたしの顔を見るなり、

「今日、おっそいですね」
「ええまあ」と、わたしの足元を見る。

「流行ってるの?」
「んなわけない」
「……どうしたの?」
「朝来たら、ありませんでした」
「盗まれたの?」
「わかんない。誰か無料レンタルしていったのかも」
「んなわけないでしょ。大丈夫?」と、苦笑いして視線を反らしたわたしの顔をのぞきこむ。

彼の心配する姿がおかしくて、笑ってしまった。同時に心配されてる自分がバカバカしく思える。誰のせいでこうなったんだと言いたくなった。

「大丈夫?……アハ。大丈夫なのかな……なんか今もさ、教室から出たら捕まっちゃうしね」
「捕まる? 誰に?」
「しらないこ」
「しらないこ?」
「碧人と付き合ってるのって訊かれました。たぶんだけど、靴隠した人も似たような女の子なのかなーって思ったりして」
「何かされた?」
「ちょっと脅されただけだよ」と、明るく言った。

「本当に? それだけ? 手を出されたりとか……」
「されてない。大丈夫」
「今度そういうことあったら呼んで」

「逆効果」と、わたしは足を止めた。