肩を組まれながらも顔を上げたら、レナが僕を見ていた。
「おはよう、リヒトくん。」
その瞬間、泡が弾ける音が聞こえて、水しぶきが立つ。
僕の周りを泳ぎ回る人魚。
危うくて、繊細で、僕の言葉じゃ表しきれないくらい美しい。
そんなレナが昨日僕にきっかけをくれた。
変えたかった、変わりたかった。でも怖かった。
憶測ばかりで怖がって、覚悟も勇気もなかった。
ぶくぶくぶくぶく。
理不尽に沈められて、自在に手も足も動かせない。
でも、きっと見つめる先に光があれば、僕らは泳げるはず。
だって、ほら、水中スペクタクル。
目を開けて知ろうとした世界は、
こんなにも綺麗だった。
───Fin.