びしょ濡れで帰った昨日。幸いなのか生憎なのか風邪は引かなかった。
朝の教室のドアの前で深呼吸をする。
手をかけて、ゆっくりと開くとみんながふと僕を見た。
「……お、お、おは、よう。」
…最悪だ。噛んだし、どもった。
それに想像していた5倍くらいの小さな声になってしまった。
上手い上への泳ぎ方が分からなくて。怖さに震えながらも必死で目を開いてみた。
でも、やっぱり失敗だったのかもしれない。
一瞬シーンとなってしまった教室はみんなが僕をみていて気まずい。
小さく俯いてなかったことにしようとした時、
「おはよう!!」
「おはよー!」
話したことのない男女が挨拶を返してきた。
それと同時に、1人の男子が近づいてくる。
「なんだよーっ、お前すごい話しかけんなオーラ出してくるから距離置いてたのに、普通な奴じゃん!」
いきなり肩を組まれて、ウッと声を出した僕に向かって大声で笑った。
「俺、お前と話してみたかったんだよね」
その言葉に、少しだけ頰が緩んでしまって、唇をキュッとすぼめる。