「ちくしょう…」
悔しかった。苦しかった。
水中にいるのは僕だけじゃないことが。
羨ましかった。寂しかった。
だってレナはあんなにスイスイ泳いでる。
いつまでも箱に囚われて沈むなんて嫌だった。
でも、僕は自在になんて泳げないから。
『あなたは泳ごうとしない。』
その時、ついさっきのレナの言葉が蘇る。
…そうだよ、僕は怖いんだ。変えられなかった時に自分が絶望するのが嫌で嫌でただ流されているんだ。
「どうしたらいいんだよっ…」
目を開けるのが怖い。知らない周りの世界を知るのが怖い。
行きたい場所を考えるのが怖い。そこへ向かって辿り着かなかったら怖い。
『怖がってたら始まらないの!』
ぶくぶくぶくぶく。
『あなたは何もできない水中になんていない。…泳げる、きっと。』
今日もまたゆっくりとゆっくりと、ただ流される。
自由を奪われた世界で。
……そんなの、
嫌だ。