部屋は、コンビニの真上のマンションの3階にあった。
玄関入ってすぐに、トイレとお風呂と洗面台と、小さなキッチンがあって、その奥に6畳程の部屋がある。
爽やかで清潔な匂い。それは私を妙に安心させた。

きっちりと片付いている。
明るくて、普通の、部屋。
煙草の吸い殻も、ビールの空きカンも、コンドームの箱も転がってない。

唯一異質だと思ったのは、髪の長い女の生首が置いてあったことくらいで、それを見て、私はバカみたいに驚いた。
練習用のモデルウィッグとかいうやつらしい。いくらマネキンといっても気味が悪いので、クローゼットに仕舞ってもらった。

その後、私は遠慮もなくシャワーを借り、部屋着(紙袋に押し込めて持って帰ってきたやつ)に着替えた。

「シャワー、ありがとうございます」
「どういたしまして。優梨さんは、ベッドで寝てくださいね。僕は床で寝ますから」

家主は、部屋の真ん中にあるガラステーブルを端によけて、布団を敷いていた。
素直に「一緒に寝るものだと思ってました」と口にすると、彼は顔を真っ赤にして、「それは、ダメです」と首を振った。

見た目によらず、真面目なんだ。


この部屋の清潔な感じは、きっと家主自身を表しているんだ、とそのときに理解した。


『どーせ全員チャラいんでしょ』
と、美容師という職業に偏見を持っていた自分を本気で恥じた。