「あーあー、お取り込み中すみませんね。荷物取りに来ただけですから。私のことはお気になさらず、どうぞ続けてください」

私は出来るだけベッドの上で絡まっている男女を見ないように、淡々と荷物(化粧品、部屋着、下着……等)を、適当な紙袋に詰め込んだ。

2人が何だか言っているようだったけど、聞こえないふりをした。

5分程度だったと思う。
私は全てを終えてから、出来るだけ丁寧にお辞儀をして「ではでは失礼致しました。他のものは捨てておいてください。はい、それではどうぞごゆっくり」と言葉を残してマンションから去った。

よくやったぞ、私。

夜道を歩きながら、我ながら迅速な対応だったと、自分を褒め称えた。
そりゃあ腹立たしいけど、しかし同時に、どこか安心していた。

やっと、開放された。
何から?それはわからないけど。

蛍光灯の下、晴れ晴れとした気分で歩く。湿気を含んだ夜風が心地良かった。
頬に伝う暖かなものは、きっと気のせいだ。

行くあてもないので、とりあえず近所のコンビニに寄ることにした、深夜2時。