「優梨さん、1つ訊いてもいい? 」
「帰るところが無くなった理由のこと?」
「うん」
雨宮さんは少しだけ気まずそうにしている。
「実は、今晩は彼氏のとこに泊まるつもりだったの。でも連絡せずに部屋に行ったら、知らない女の人と裸で抱き合ってて」
「え?!」
「だから、荷物持って出てきちゃった」
「……別れたんだ?」
「別れるも何もないよ。なんていうか、彼氏じゃなかったのかも」
“付き合いましょう” が無かったんだから、“別れましょう”がないのは自然のことだ。
沈黙を保つケータイ。
もし私が『彼女』という立場ならば、言い訳の1つや2つ、あっても良いはずだ。なのに、あの野郎からは連絡1つこない。
所詮、体だけの関係だったんだ。
自分で言って、虚しくなる。
「バカみたいでしょ」
力なく笑うと、雨宮さんは、優しい表情で私の髪を優しく撫でた。
「ちゃんと大切にしてくれる人、見つかるといいね」
そんな人、いるのだろうか。
「そろそろ寝よう」
そう促されて、ふかふかのベッドに横たわる。
電気が消されると、じわじわと静寂が訪れた。
「セックスしないの?」
何気なく訊いた。
闇の中で彼がどんな顔をしていたのかわからないけど、 静かに「しない」と返ってきた。
その声が切なくて、胸がギシギシ軋んだ。