「ねえ、先輩」



シャーペンを走らせる姿に見とれながら呼びかける。



声だけの返事に口を尖らせた。




私より、勉強か……。



いいんだよ!?

だって受験生だもん。



先輩は推薦より実力で行きたいんだって。



凄いよね!かっこいい!大好き!




だから、応援してるんだ。





構ってもらえないのは正直悲しいし、寂しいけど、そんな先輩も好きだから。





「で、なに?」




一区切りついたのか、顔を上げて聞いてくる。



やっぱりまだこの距離は慣れないや。


目が合っただけでドキドキしてるし。



息とか止まりそう。




……先輩は、普通でいいな。







「……いや!何でもないです。ただ呼んでみただけです」




手をブンブン振って否定した私。






──うそつき。





誰かが私に言う。そんな声が聞こえた気がした。




聞けないや。先輩が困っちゃうだけだもん。





『私のこと、好きですか?』



なんて重すぎるから。