「な、なんでしょう、か」
「遠い」
そう言って先輩が隣をポンと叩く。
私は指をさした。
先輩は縦に首を振って、またそこを叩いた。
ここに座れと?
まるで自分の部屋にいるかのようにくつろぎきってる先輩に恐る恐る近づいていった。
「もう一度言うけど、ごめん」
ちゃんと目を合わせて言った先輩。
私は静かに頷いた。
「俺さ、あまり表に出すの苦手なんだ」
うん、知ってます。
「それに言葉下手だし」
それも、知ってる。
「実際、人と関わるのとかめんどくさいって思ってた」
へ、へぇ〜。
……それは知らなかったです。
だって、あんなに囲まれて笑顔でいて、それに野球部だし、チームプレーだし……。
「でも、……」
合わせていた目が逸らされた。
目が合ったかと思えばすぐ逸らされてしまって、その行動に不思議に思う。
先輩はこれから何を言おうとしてるの?
だから、私は待つ。
一つも聞き逃したくないから。