──グイッ。 「ごめんっ」 すごい音が耳に届く。 多分私以上かもしれない。 ドアを開ければするりと手が伸びてきて、勢いよく引き寄せられて、視界が真っ暗になった。 なんだろこの感じ。 感覚はあるけど、頭が働かない。 先輩の息づかいとか 心臓の音とか 温度とか…… 分かるのに。 何も考えられない。 その前に言葉が出ない。 やっと発せられたかと思えば、わけのわからない涙の嗚咽だった。