子犬男子に懐かれました



お喋りしてると、あっという間にコンビニに着いてしまった。


「優也くん本当にありがとう」


と、お礼を言った時だったーー、



「あれ、お姉さん」


ーーっ!

え、嘘何で?


そこには子犬男がいた。


「さっちゃんの弟さん?」


「え、いや…弟じゃなくて、ちょっとした知り合い?まぁ…弟みたいな感じだね、うん!じゃあまたね優也くん」


「ん?うん…わかった。また連絡するね、おやすみさっちゃん」


「お、おやすみ」


何故だ、何故優也くんと子犬男を合わせたくないと思ったんだろう。

優也くんに勘違いされるのが嫌だった?

……違うような


「今のお姉さんの彼氏?」


「違うよ、お友達」


「ふーん、お姉さんは友達だと思ってても相手の人はそうな風には見えなかったけどな」


「ガキのくせに生意気」


高校生のくせに、何を分かったように


「お姉さんいくつ?」


「22、あなたは?」


いつの間にか近くの公園について、2人でベンチに座る。


「17歳、お姉さんからしたらガキだね、うん」


…高校生って、分かってたけど


「まだ17……5歳も下なの…」


なんか…ショックというか、時の流れに恐怖を覚える。




「そんな幻滅しなくても」


「するし!するよ!弟でもおかしくない年齢じゃん」


「大丈夫、お姉さん綺麗だから」


……っ、


「な、なにそれ、全然フォローになってないんだから……」


なに高校生のガキにドキッとしてしまっているんだ、生意気な。


「そういえばお姉さん名前何て言うの?」


「高倉皐。あなたは?」


「中本壮介」


「初めてお互い名前聞いたね」


ソッとブランコに乗り、揺れる。


「皐ちゃん、また会える?」


「え?」


「また…会いたいんだ。何か皐ちゃんといると忘れられるんだ」


そう言う壮介くんの表情はとても悲しい表情をしていた。




「忘れたい人がいるの?」


そう言うと、無言で頷いた。

あまり…深入りしない方が良さそう?


「じゃあいいよ、会おう」


「ありがとう皐ちゃん」


……何やってるんだか

17歳のガキのわがままに付き合うなんて。


「じゃあ連絡先教えてよ」と、LINEのQRコード画面を私に差し出す。


私のLINEの友達に新たに【中本壮介】と追加された。







あ…でも、


「壮介くん彼女いるよね?いいの?私と会っちゃって」


確か上司と外回りに行ってた時のスイーツ屋さんの前の通りで楽しそうに笑って歩いていた。


凄く可愛くてお人形さんみたいな彼女だった。


「あぁ……違うよ、皐ちゃん。あれ幼なじみ」


「ごめん、彼女かと思った。……可愛いね、幼なじみ」


「よく黙ってれば可愛いのに、って周りから言われてるよ。それほどうるさい奴だよ普段は」


そうやって語る壮介くんの顔はすごく悲しそうだった。



「ほら、明日学校でしょ?もう遅いから帰るよ」


「えー、まだ皐ちゃんと話したいんだけどなー」

と甘えた口調で言う。



「だーめ、私も明日仕事で早いんだから帰るよ」


「分かったよ、じゃあ皐ちゃんの家まで送るよ」


「いいって、私もう大人だから」


さすがに5歳下に送られると悪い事させてるように感じる。


「皐ちゃん、女の子でしょ?

あんまりガキ扱いしないでよ。俺、男なんですけど」


「わ、分かったよ…」


結局、送ってもらうことに。







「へー、皐ちゃん1人暮らしなんだ」


「うん、就職先決まって就職先に近い方がいいでしょう?それで実家離れて4月から1人暮らし」


ガチャガチャ と鍵を差し込む。


「家も覚えたし、皐ちゃん1人暮らしだし、いつでも遊びに来れちゃうね」


「なっ、あ、なんて事…っ」


急なぶっ飛び発見に思わず動揺してしまった。


「ぶ、皐ちゃん動揺しすぎ」


「ほら」と背中を押され、部屋の中に入れさせられる。


「早く入りな、明日仕事頑張ってね皐ちゃん」


「あ、ありがとう……壮介くんも学校遅刻しないようにね」


「はいはい、じゃあおやすみ」


「おやすみ…」


ーーガチャ

と静かにドアが閉まった


”皐ちゃん”ーー。


壮介くんがそう言うたびに、胸がきゅんとした。

それは皐ちゃんってあまり呼ばれた事がなかったから。

いつも、皐かさっちゃん。だからすごい不思議で変な感じがしたな…




壮介くんの”忘れたい人”って誰なんだろうーー?

って……別に私が気にする事でもないし。



明日のアラーム設定しようと携帯画面を開けると、一件のメッセージが届いていた。

【優也くん】からだ。


【今日はありがとう!
本当に楽しかったよ(^ ^)
次またどこに行くか決めとくね】


本当に印象違ったな…人って初対面では分からないって事が今日分かったよ。


さてと、お風呂入って寝よう。

私も遅刻しないようにしないと…



今日はいつもより30分早めにアラームを設定した。




朝から最悪です。


目の前には、香氏。はい、昨日のデートについて事情聴取中です。


「優也くんとどうだったのよ」


う…香、怖いっす…


「どうもこうも別に何もなかったよ。ランチしてお喋りして帰っただけ」


「ちぇっ、つまんないの〜。何か進展あるのかと思ったのに」


いやいや、そんな早く進展するわけないでしょう。


「まぁ…具体的に日にちは決めてないけど、次また会う約束はした」


「へ?まぢで?なになにいい感じじゃーん!あんなに嫌がってたのにどうしちゃったの?」


「んー、別に悪い人ではないって事が分かったからかな」


見た目通り爽やかで、チャラい感じもなかったし…


「ほらね?一回会ってみるべきだったのよ!あたしは応援してるからねっ」


「いいよ、困る。それより自分の恋愛でも心配したら?」


「あたしはいーの。適度にフラフラ遊んでる方が楽だから」


本当にこの人は……チャラすぎる。




「あ、さっちゃん。あたし急用ができちゃて、既契約さんの所お願いしたいんだけど大丈夫かな?」


「あ、はい!行ってきます」


1人の上司のお子さんが熱を出したみたいで、私が変わりに行くことになった。

資料を持ち、お客様の所へ車を走らせる。


「やっぱり、この辺私の家の近くだ」


お客様の”一ノ瀬さん”はずいぶん私の今の1人暮らしの家と近い所に住んでみえてる。


ピンポーン

とインターホンを鳴らすと、明るい声が聞こえた。


「あっ、私〇〇生命の高倉皐といいます。本日〇〇さんの変わりにお伺いしました。」


そう言って出て見えたのはすごく綺麗な奥様だった。


「どうも、初めまして。わざわざありがとうございます〜」


随分明るい奥様だなぁ…




「どうぞ、上がって下さい」


「お邪魔します」


上司のお客様であってなんだかものすごく緊張するな……

お茶を渡され、一口頂く。


「高倉さん、お若いのねおいくつなのかしら?」


「22歳です。まだ入社1年目なんです、なのでご迷惑おかけするかもしれませんがどうぞよろしくお願い致します」


「まぁ、素晴らしいわっ、私の娘も17だからそんなに変わらないわねっ」


「いやいや、5歳も違うとさすがに変わりますよ」


壮介くんと同い年の娘さんがいらしてるんだ。

さすがにこれまた妹感覚になってしまいそうだ。