子犬男子に懐かれました





……




目の前には……


「どーゆうことかしら?」



すごい顔して私に迫ってくる香。


「し、仕事中だから詳しい話しとかは後にしない?」


「それで逃げられるとでも思ってんの?皐……どーゆう事っ?!」



怖すぎる……


そりゃあ問い詰められて当然だ。


優也くんでもない男の子と2人で花火大会に来ていたのだから。



……あ、


「香こそ、洸くんと来てたじゃん。香こそどうゆう事よ」


「あたしと洸くんよりあんたでしょうよ。……あたしは別にただ洸くんが好きだから誘って一緒に行っただけ」


「結構、本気だったんだ」


「…まぁ、でも洸くんはあたしの事友達としか見えてないと思うけどね。

…って、皐にまんまと話しを反らされたんですけど!」






……げ

上手い事逃げれたと思ったのに。


「さーて、言いなさい」


…言いたいけど、高校生だなんて知ったら何て言われるのだろう。



「ひっ、引いたりしない?」


「は?何で」


「とりあえず……聞いても引いたりバカにしたりしない?!」


「しないってば、だから早く教えてよ!気になる…誰なの、あのイケメンな男の子は」



真剣な香の顔。

香には正直に言わないとーー、










「…………私の、好きな人」









「………え」


香は目をまん丸にして固まった。

……ほらぁ


「ま、そ、そうだよね…花火大会に一緒に来るんだもん。

でも………好きな人って、皐最近まで優也くんじゃなかったの?」


「優也くんはいい人だな、とは思ってたけど…好きではなかった」


「じゃあさ、好きな人がいるのに何で優也くんの告白保留にしたの?

保留にした時点でさ、優也くんは少しでも期待してるかもしれないんだよ?何で断らなかったの?!」




珍しく香が怒った。



「告白された時は、壮介くんの事も好きがどうか分からなくて…その…」



……私、言い訳しようとしてる。

こんなの…



「……ごめん、私がいけなかった」


「で、付き合ってるの?」


「……まだ…。優也くんと話しをしてから。って決めてる」


「そう……」






「香、ごめんね。洸くんも香もせっかく応援してくれたのに……っ、私…っ、最低な事した…」


申し訳なくて、

何で早く、もっと早く、

香に言わなかったんだろう。



「……別にいいよ。恋って分からないもんじゃない」


「……え」


「そりゃあ、優也くんと上手くいって欲しかったけど……、壮介くんだっけ?の事が好きなんでしょ?」


「うん…」


「じゃあその気持ちを大事にして。優也くんにはきちんと話して、ちゃんと謝るんだよ?」



香……。

今までただチャラチャラしただけの軽い女だと思ってたのに、

こんなに私の事を考えてくれるなんて……。




「ありがとう、香」








私は、同じ同期であってとてもいい友達を持ったな……。



「で、壮介くんっていくつ?」



………っ、


「え、その流れでそれ聞きます?」


「もちろん☆」



ニッコニコの香だけど…私には年齢を言った瞬間真顔になるのが想像つく。



「じゅ……17」


「………………………………は?」





……かなりの間があり、予想通り真顔になる香。


ほらほらほら、こうなりたくなかったんだよ……

絶対引かれた。








「え、5個下?高校生?」



コクリと無言で頷く。



「さっ、皐…っ、あんた何があったの?皐みたいなツンツンな女が、どどどうして高校生なんか…っ?!」


「失礼な…、私だって自分にびっくりよ!ただのガキとしか見てなかったのに……こんなつもりじゃなかった」


「皐…」



最初はただのガキでうるさくて、しつこくて…弟みたいで…


だけどーー、


私を笑顔にしてくれて、凄く強引だけど…、優しくて、



「好きになってた……。どうしようもないくらい好きなの…ねぇ香、いいのかな?こんな年下の事好きになって…引くよね…だって未成年だよ?」


相手はまだ17。

これから、大学生になって社会人になっていく。


まだまだ若くて可愛くて沢山の出会いがあるのに。



「私で……いいのかな………」









「大丈夫。

壮介くんも皐の事好きって言ってくれてるんでしょ?」


「……」


「自信持ちなって。あと、年の差なんて…今の時代5歳差なんて普通よ」


「いや、でも相手まだ高校生……」


「……はぁ、皐って恋愛に関してそんなウジウジくんだっけ?」


「な……っ、」


「その気持ち、大事にしなよ。あたしは皐の友達だから皐の恋愛を応援する。」



……香…


そうだ、ウジウジ考えてても仕方がない。



「私、優也くんと話してくる」


「頑張んなよ」


「うん、ありがとね香」


「いいんだよ〜、あ、また壮介くんあたしに紹介してよねっ」



といつもの笑顔になる。






仕事も終わり、いつものように鍵を取り出そうとした時だった。


「皐ちゃん」


ーーー!


振り返ると学校がない為か、ラフな格好で立っている壮介くんだ。



「どうしたの?」


「どうしたのって、会いたかったから会いに来たんだよ」


う…、率直過ぎて心臓に悪い。


「は、入る…?壮介くんが好きなオムライス作るけど……」


「まぢ?!食べる!」


…ほんと、子犬みたい。



いつものように壮介くんを家に入れ、いつものように…家…に、、


ーー家…

今までは可愛い弟目線だったから普通だったけど…






「ん?皐ちゃんどうした?」



横から顔を覗かれる。


サッ と勢いよく顔を反対側に反らした。


今はそうじゃないーー、

好きだから…

1人の男性として、私……、かなり意識している。



「まって、あの……きゅ、急に近付かないでくれる?」



手のひらを壮介くんに向けて両手を前に突き出す。


「何で?」



少しずつ下がるが、トン と背中が壁にくっついてしまった。



「……今更恥ずかしい?」


「そんな…っ、」


「可愛い」


「……な、なに言って……」


「本当の事」



そう言って壮介くんは私の髪をふわっ と撫でた。