綾乃が講義を受けていると、マネージャーの藤堂から、メールが入った。
≪明日、16時からＭＶの打ち合わせよろしくお願いします。≫

（－　ミュージックビデオ…。）
綾乃はため息をついた。

こないだの何曲かとった曲の中で事務所は一番に気に入ったのが綾乃がピアノを入れたバラードだった。
それに伴いシルエットだけでもいいからと、強引に決められてしまった。

(―　お父さんの陰謀も感じるな…。)
綾乃が、父が自分の事を心配していることは解っていた。
母はいつも姉だったが、何かにつけて、父は綾乃を気にかけてくれていた。

（－　ここで、変わって欲しいんだろうな。）
綾乃は大きくため息をついた。

「竹田さん、何かあった？」
教授の声にハッと我に返り、教科書に目を向けた。


次の日の１６時、綾乃は事務所に行くと、会議室に入った。
「おはよう、綾乃ちゃん。」
タクが声を掛けた。
「おはようございます。やっぱりこの時間でもおはようなんですね。」
綾乃も笑って言った。