煙草を吹かしていた…

悪趣味な煙草、よくそう言われた。

『John Player Special』


高校に進学して間もない頃、親父の真似をして、生意気にも煙草を吸おうと思った。


吸う煙草は、決めてはいなかった。


自動販売機でどれを吸おうか考えようと思った。


目に入ったのは、パッケージが黒く、金色の文字で書かれた『JPS』


とても目立っていた…すぐにそれに決めた。




俺は、家が近いにも関わらず、ギリギリまで寝て、自転車で登校していた。



入学してから三ヵ月程経った頃…


その日は雨が降っていた


放課後、駅前の本屋に行くために、自転車を走らせていた。


前方から歩道を塞ぐように、二人で並んで歩いてくる女子がいた。


うちの生徒だ…
一人は確認できた。


同じクラスの子で、まだあまり話した事はないが、名前くらい分かる。


村仲優子だ…


もう一人は…誰だ?


傘で隠れていて、顔が見えない。


優子は前から自転車が来ている事に気付き、道をあけようとした。


通り過ぎようとした、その瞬間、後ろにいた知らない子の顔が見えた。


傘の下から覗く様に、彼女も俺を見ていた。


人と自転車がすれ違う、ほんの一瞬の出来事。


自分にこんな事態が起こるとは、思ってもみなかった。


早くなる鼓動を感じた…


何か大切なものを、思い出したような気がしたのだが…


それが何かは、はっきりと解らなかった。


俺は、思わず自転車を止め、振り返った。


二人はそのまま駅の方向へと歩いて行った。


本屋に着いても、すれ違う瞬間に見たあの子が、脳裏から離れなかった。


髪が長く、色が白く、少し色素の淡い、茶色がかった瞳…


一目惚れだった…


ビビッと来るってゆうのは、こうゆう事なのか?そう思った。


高鳴る鼓動が治まる頃、いつの間にか雨も止んでいた…


六月下旬、雨の降る日だった。