秋を迎えた頃…


俺は、バンド活動にあけくれていた。


色んな、アマチュアバントのイベントに、積極的に参加し、俺達のバンドは確実に、その名を拡げていった。


全国規模の、アマチュアバンドの大会に焦点を当て、出場することもできた。


審査は、デモテープのオーディションから始まる、第一審査…


選ばれた八組が、ステージで演奏する、本選…


優勝とまではいかなかったが、それによって、ファンも大勢いついた。


まさに、完成度の高い、高校生バンドとして、脚光を浴びていたのだ。


俺達は夢に向かって、必死に走っていた。


元々、俺を誘ってくれた張本人である、ドラムの飯田亮には、感謝したい。


彼の誘いがあってこその、今の俺があり、バンドがある。




しかし、問題が起きた。


12月…街がクリスマスの雰囲気に、包まれてきた頃…


それは、俺達のバンドにとって、最大のピンチとなる出来事だった。


ボーカルの浜田浩之と、ベースの河原彰が、バンドから抜けたい、と言い出したのだ…


俺達は必死で止めたが、彼らの意志は、変わらなかった。


二人が辞める理由は、こうだ。


ボーカルの浩之は高校三年。実家は会社を経営しており、大学進学の後、その会社の後継ぎにならなければならない。という…


まだ学生の身だが、このままバンドを続けて、プロへの道が具体化していくと、皆に迷惑をかける。と…



ベースの彰の方も、同じく、高校三年だ。こちらも、年が明け、高校を卒業したら、大学に進学することが決まっていた。


その事は、俺達も知ってはいたが、どうしても、二人共が、バンドは続けていけない…との事だった。


全ては、残される俺達二人への計らいで、あらかじめ、話し合われていた事だったのだ…


彼らは、プロを目指して、活動していくなら、俺達の足を引っ張る形になると、そう判断したのだ。


「結局、このバンドは、趣味の域か…そういう気持ちなら、引き止めても意味がないよな…」


俺と亮は、それを承諾せざるを得なかった…



かくして、俺と亮の、高一コンビが残された。という訳だ…