優子は、俺の返事を待たずに、寄り添って来た。


「ちょっと!優子?」


「……少しだけでいいから…お願い」


お願いって言われたって…こんなの…


優子は、ちょうど俺の太腿の辺りに、顔を当て、俺を見上げた…


…………


やばい!可愛いかも!


目を見続けることが、できない…


俺は、たまらず、目を反らした。


それにしても、何で優子が、こんな…


ロマンチックな状況は、女をこうも変えるものなのか?!



……………



俺は、一体いつまで、こうしいてれば良いのだろうか?


優子の髪が、ほのかにシャンプーの香りを漂わせ、それが俺の嗅覚を、刺激する…




ドックン…ドックン…




心臓が口から出てきそうだ!


これ以上は、とてもじゃないが、我慢できない…


俺は、この状況を何とか打開しようと、思い切って、優子の顔を見た。


「……優子?」


ZZZ…


寝てる…


「おい、優子!起きろ。普通寝るかぁ?!」


優子の神経も、きっと鉄に違いない。


「…あっごめん…うとうとしてた…」


いや、完全に寝てましたけど…


「優子、もうそろそろ部屋に戻ろうか。眠いみたいだし」


「…うん。ごめんね、散歩の邪魔しちゃって」


「いや、俺も眠くなってきたからさ」


俺は嘘をついた…


こんな状況で、眠くなるわけがない!


何だか、そう言わないと、駄目なような気がしたからだ。


優子に、何かする気は、さらさら無かったが、この状況が、自分の気持ちを、裏切ってる感じがしたのだ…


部屋へ戻る途中、二人共口を開かなかった。

ただ、俺には、気まずいという感情はなかったが…


部屋に着くと、相変わらず、隆志のいびきが響いていた…


あれ?美紗がいない…

どこに行ったんだろう?


「俺、ちょっと探してくる!」


「あっ、空君!」


俺は、優子の呼ぶ声を振り切って、辺りを捜し始めた。