俺はその時、何も考えずに堤防に立ち、夜の海を眺めていただけだった。


突然の物音と、名前を呼ぶ声…


それには、さすがに驚かされた。



「うわっ!誰かと思ったら…」


「眠れないの?私もなんだ…朝早かったのにね」


優子だ…


「あぁ、ちょっと落ち着かなくて…」


「ははっ、私もなんだ…普通はそうだよね。あの二人の神経は、きっと鉄よ!」


やっぱり、俺が普通だったか…もう一人いて、安心した。


「あっ!部屋にあの二人だけ残して、大丈夫かな?!」


俺は、ぎょっとした。

「何、言い出すんだよ!」


「なんてね!隆志君って、あぁ見えて、なかなか紳士的だし…」


「あぁ、有り得ないよ…」


隆志は、俺の気持ちを知っているんだし…


「優子は、隆志のこと、どう思ってるわけ?」


「隆志君?何でよー!何とも思ってないよ。凄く気が利くし、いい人だけど、恋愛の対象じゃあないわ」


「そっかぁ…隆志、いいと思うんだけどなぁ…」


………………


少しの間、静寂が走った…


「座ろうか…」


「あぁ…そうだな」


「楽しいと、時間が過ぎるのが早いね」


「あぁ…でも、明日もあるじゃん!」


「そうだけど…今の所は、不完全燃焼かな…」


「俺達と一緒じゃ、つまんない?」


「いや、そういう意味じゃなくて…」


……………


何だか、この…二人っきりの感じが、妙に…落ち着かないなぁ…


堤防に、波が打ちつける音は、とても穏やかで、ロマンチックさを演出している。


すると優子は、急に仰向けになった…


「わぁ…見て!星が綺麗!」


空を見上げると、数え切れない星が、俺達を包み込むように広がっていた。


数秒に一つは、流れ星を見ることができた。

「本当に綺麗…何かロマンチックだね…」


「あぁ、こんなに綺麗な星空、久しぶりに見た気がする」


美紗にも、見せてあげたい…




「空君……」


「……ん?」


「……ちょっとだけ…くっ付いてもいい?」

何だって?!