皆、疲れきり、少しばかりの後悔がよぎった頃、隆志が待望の言葉を発した。



「よし!山頂だ!着いたぁ〜!」


辺りは、いつの間にか薄暗くなり、夕日を見るには、絶好のタイミングとなったようだ。



美紗は、一番に展望台の上に昇り、俺達を急かした。


「見て!みんな……綺麗!」


美紗の声に、皆が急いで後を追った。


そして、目に入った瞬間、言葉を失う程の景色が、そこにあった。


それは、それまでに見た夕日の中で、一番綺麗なものだった…


いつも何気なく見ていた夕日。


それと同じ、太陽のはずなのに…全く違うものだった。


朱く染まった空に、浮かぶ夕日は、I市の海岸線をくっきりと際立たせ…


その向こうに見える海原は、静かに波打ち…


群れをなして飛ぶ鳥達は、いつも以上に、綺麗なものに見えた。



水平線を、太陽が沈んでいく…



街はもうすぐ、夜を迎えるんだ…



その風景は今でも忘れられない…目に焼き付いている。



「空君…来てよかったね。すごく綺麗…」


「あぁ…」


実は、俺はその時、気付かれないように、何度か美紗の横顔を見ていた。


こういうシチュエーションも悪くない…そう思えた。




この時間だけは、まるで恋人のように…


そう思っていたのは、俺だけだったのかな?








太陽は、数分で沈んで行った…


俺達は、黙ったまま、それを見送った。