「お前ら〜!何二人でいちゃついてんだよ」


隆志と優子が、戻って来た。


二人きりの時間も、これで終了…


「い…いちゃついてねぇよ!ってか次、どこ行く?」


まだ帰るには早い…というか、帰りたくもないが…


すると、優子が言った。


「あっ、村上君!あそこ行こうよ。K山の展望台!今から行くと綺麗な夕日が見れるよ」


「あそこか…ちょっときついかも知れんが、いいかもな!」


俺は、隆志の言葉に少し引っ掛かったが、まぁ、善しとした。




I市には、街全体が見渡せる、展望台がある。


俺達は、K山の山道入口まで、バスを使い向かうことにした。


「夕日、綺麗かなぁ…」


美紗は、バス停で待つ時間から、すでに胸を踊らせている様子…


女はいつでも、ロマンチックなシチュエーションには、弱いものだ。


「今日は天気もいいし、きっと綺麗だよ」


考えてみると、もはや当たり前のように、会話するようになったな…


まさか、事がこんなにも、とんとん拍子に運ぶなんて、思ってもいなかった。


まだ、美紗と一緒にいられる。


俺は、ただそれだけで嬉しかった。



俺達はバスに乗り込み、山道入口を目指した。


座席に着く時、美紗は当たり前の様に、俺の隣に座った。


本当に、カップルのダブルデートの様だ…


周りにいる、知らない人達は、俺達を見て、付き合っていると思うのかな…




そんな妄想をしている間に、バスは、山道入口に到着した。


「よし、登るぞ!」


やっぱりか…山だもんな…


さっきの隆志の発言で、何となく予想は付いてはいたが…



……数十分後……



すいません、ナメてました…


思った以上にきついな…


「美紗…大丈夫?」


優子も、経験者とはいえ、やはりきついようだ…


K山初体験の美紗を、気遣っている。


「隆志…後どれくらいかかるんだ…?」


「…もうすぐ着くはずだ…」


お互いに、励ましの言葉を掛け合ってはいたが、四人とも息を切らし、後半は、ほぼ黙り込んでいた。