墓地の間を砂利を踏みしめて歩きながら、優さんが話しかけてきた。
「サイタカオリ、だったんだな?」
「ずっと言えなくて、ごめんね」
「いや、色んな事情があるんだろ?
唯歌と姉妹だったってことが、一番驚いた」
フ、と笑みが洩れる。
「そうでしょうね。
私も、姉が優さんを知ってたなんてビックリした」
「じゃあ、盆も彼岸もこないだの法要も全部…」
「そう、唯歌の初盆、お彼岸、一回忌だったの。
今日は姉の誕生日だけど、両親はまだ唯歌が生まれた日に墓参りは行けないって…一人で来たの」
「一人で?」
優さんが驚いて言った。
「車は出してもらったから、駐車場で待ってるわ」
「お兄さん?」
「ううん、お手伝いに来てくれてる人」
「そうか。
お前、日本舞踊も?」
「うん。
母と姉はあまり興味なかったみたいだけど」
「将来も?」
「それは……わからないけど。」
日本舞踊は人付き合いや経済的なこともかなり負担になるから、その道で生きていくのは、きっと簡単なことではない。
それは、分かっていた。