「……ここで」
広場の隅まで来て功さんが立ち止まって振り返った。
病室で酸素マスクをつけられていた姉の姿が頭に蘇った。
胸が、一瞬、苦しくなった。
「………うん。
あの日、病室に入って、お姉ちゃんのそばに行ったら、私をみて言ったのよ。
家族への言葉のあと
『……すけ、しあわせ、に……』って。
すけ、がつく名前の人なんて、分からなくて、付き合ってた人がいることも知らなくて、探せなくて、今日まで伝えられなかった。
お姉ちゃんは、最後にあなたのことを、あなたの幸せを……考えたんだよ?」
目を見開いて私を見た功さん。
その目から涙が溢れた。
功さんが私の肩に手を置いて、その自分の腕に顔を埋めて泣いた。
震える背中にそっと手を添えた。