優さんの誕生日から、数日経った土曜日。
唯歌の誕生日である。
「おはよう」
リビングにはすでにお線香がうっすらと煙を漂わせている。
「おはよう。今日も仕事?」
リビングにいた両親に話しかけた。
「年度が変わって忙しくてね」
「そっか。
私、今日、お墓行ってくる」
「………」
両親が顔を見合わせた。
「歌織?私たちは行けないわ。
ごめんなさい、一人でいける?」
「歌織。
私たちは、唯歌の誕生日に、唯歌が生まれた日に墓参りには行けない。
忘れたわけじゃないけど、まだ祝えない。
……すまないね」
祝う気持ちにはなれない……悲しみが癒えていない気持ちは同じだが、姉が生まれた日は、姉の墓に行きたくないのだろう。
「大丈夫。
私は、行ってもいいの?」
「行ってやってくれ」
「ありがとう、歌織ちゃん」
「午前中に行ってくるね」
「もし、誰か知ってる人が来てくれてたら、飲み物でも、あげてほしい。」
「はい」
仕事に行く両親を見送って、黒のパンツスーツを着た。