夕方、両親との待ち合わせの場所まで、優さんの家からタクシーで行った。
山手にあるレストラン。
店に入ると、両親はまだ来ていなかったので、入り口の待ち合いの席で待っていた。
5分位すると、両親がやってきた。
「待たせたね」
優さんの家で髪と化粧をしっかり直した私は、笑顔で迎えた。
「そんなに待ってないわ」
二人で買い物してきたらしく、大きな紙袋を持っている。
荷物とコートを預けて席に案内してもらう。
席をみると、空いた席がひとつ。
私の目線に気付いた母が
「総一も来るわよ」
「そうなの?」
「バレンタインだから、プレゼント持って聖者になってくるよ。」
ぷっと笑いながら
「お兄ちゃんらしい」
と言うと、
「手作りだろ?」
とお兄ちゃんが来た。
久しぶりに家族で喋りながら、ふと、違和感を覚えた。
何にだろう、誰にだろう。
分からず、そして、聞けなかった。