「一週間前から自由に使ってください、その時には客席も準備しておきます。
楽器もどうぞ運んでください。
楽屋は……」

盛り上がるおじさんたちに、挟む言葉もない。

「色々ありがとうございます。
失礼して今日はそろそろ…」

師匠の言葉に頭を下げた。

やっと帰れる……

ホッとしながらホールを出て校長と教頭に別れの挨拶をして、校舎に向う二人を見送った。


「機嫌よく貸してくれたみたいですね、お疲れ様です」


と帰ろうとすると、

「明日は青蘭に行くぞ。
もちろん、二人も一緒に」

「「え~」」

香奈美さんと言葉が重なった。


「青蘭の生徒に出てもらうんだから挨拶だろ?」

「断ったら?」

と聞くが、無視された。

「車で放課後、ここに迎えに来るから、自転車は諦めろ」

それだけ言って、お疲れさん、とさっさと自分の車に向かった師匠を言葉もなく見送り、香奈美さんが納得できない表情で言った。

「なんで、私達が?」

「私なんて、明日の登校どーしよ?」

「送ってもらいなよ。
でも、めんどくさいなあ」

「はぁ、そうするしかないですよね?」

「じゃ、また明日」

頷いて苦笑いで手を振りながら香奈美さんと別れて、自転車に向った。