何も言わなくても、ビスケット入れて砕くためのビニール袋と棒を出してくれ、チョコ割って入れて、と耐熱皿をくれる。
チョコを入れて、レンジでスタートさせ、その間にビスケットを砕く。
粉々にするのが楽しくてあっという間にできて、チョコに混ぜ合わせる。
クッキーを焼くときの型を貰って流し込んで固まるのを待つ。
それから、手際よくトリュフを作り出した春菜をみる。
「トリュフ、よく作るの?」
「それは、詳しく聞かないで」
「あ、今までも作ったな~?」
「内緒だけどね」
「ふーん?元カレってこと?」
「そうだったり、片思いだったり。毎年バレンタインは半分イベント気分だったから。
トリュフ作るのも食べるのも好き」
「そんなものなんだ」
意外な行動に内心驚いていた。
「歌織は好きな人はいなかったの?」
「いなかったよ。お父様にもチョコあげたことない」
女子高だから、とは言わなかったけど。
「へ?そうなんだ。初恋、初彼ってこと?」
「そう」
女子トーク満開、色々聞かれた。
好きな人なんていなかったし、恋よりも自分がしたいことがあった。
それは、今でも変わらない。
でも、優さんはいつも穏やかで優しくて、一緒にいると嬉しくなるし、一緒にいない時は声が聞きたくなる。
優さんがどう思ってるのか、分からないけど、嫌じゃないなら、私は、きっとこのまま何も変わらない。
ワガママなのかな?
大切にしたい人だけど、大切に出来てるんだろうか。
彼氏のこと何も知らないじゃない。
そう言われたら、反論できないな。
ラッピング用の箱を組み立てながら考えていた。
「そろそろ固まったんじゃない?これ乗せて掌で押し出してみて?」
クッキングペーパーをくれる。
ビスケットで作ったクランチチョコは割れたりせずに、様々な形に固まっていた。
1つ食べてみた。
「おいし」
出来上がったチョコを小さな箱4箱に入れて、2箱を春菜に渡す。
「初の手作り、食べてみてね、龍くんにも」
「いいの?ありがとー」
春菜が、作ったトリュフも2箱貰って、自分で作ったチョコも持った。
「これは優さんにあげてね、毒はないわよ。
こっちの箱はご家族でどーぞ。」
「ありがとー。また作ってね」
「はぁ~歌織ってほんとに料理嫌いなのね?」
「料理が私を嫌ってるの」
「はいはい。また一緒に作ろうね」
「試食係でいい」
アハハと笑いながら玄関に行き、帰る用意をする。
今日はありがとう、またね
明日は2人で食べてね
と春菜の家を出て駅に向かう。
優さんや千奈美の家と同じ最寄り駅。
ショッピングモールから右に行けば優さんや千奈美の家。
左に行けば春菜の家。
意外にも近いのでビックリした。