夏を終えて、秋になり、発表会の日。
私は、兄弟子たちと一緒に舞台に立った。
数人で1つの話を演じる演目。
役に集中するのも、他の人と掛け合いの間が大切になる。
動きは日本舞踊独特だが、話はコメディのようである。
兄弟子の一人は、母方の従兄弟で、次の家元になるだろう。
この発表会の前に祖母に聞かれた。
「家元になりたいと思ってる?」
「家元は継ぎません」
「そう。それでいいのね?」
「はい。次の家元は義徳さんですか?」
義徳は母方の従兄弟で、大学生である。今まで、様々な賞もとっている。
「そうなるかな?
でも、支えてやってほしい。やっぱり心配でね」
「跡目争いになるところでした?
義徳さんなら大丈夫でしょ?
出来る限り、お手伝いさせてもらいます。
卒業後の進路に家元ってすごいわね」
思わず笑いながら言った。
「歌織はサイタの方にいくの?」
「多分ね」
「そう……あなたが納得してるならいいのよ。
大学は行くのでしょ?」
「音楽系の大学に行きたいと思ってるわ。
頑張らないといけないけど、ね?」
そう、私は、大丈夫。