「唯歌は、あの日のまま、なんだな。
俺は、嫌でも過ぎていく時間の中にいて、何もかも変わっていく。
遺された者は、生きていくんだな」

「だから、変わっていくのよ
辛い気持ちは癒えないけど、立ち止まっても時は進む。

あの日の私はもう、いないわ。

ずっと大切な家族であって、もう、会えないけど、悲しみにくれていても生活はずっと続いていく。

何かに対する責任も、生きていくための生活も、お姉ちゃんが亡くなってからも何もかわらないよ。

お姉ちゃんがいなくなった世界で、それでもやっぱり生きていくの。

私は、来年には、お姉ちゃんより歳上になってしまうわ

見守ってくれると信じて、自分の幸せを見つけて、人生を全うするまで、生きていくのよ。

でも、お姉ちゃんはあの日のまま、これから先に起こることには責任も選ぶ自由もない。


あの日のままのお姉ちゃんに指輪をあげてほしい」



「歌織ちゃん、指輪を渡すことが

俺には、まだ辛いんだよ?

一緒にいた時間が楽しくて、忘れることは出来ないから」

「お姉ちゃんは幸せ者ね。

でも、お姉ちゃんは、新しく幸せを見つけることは出来ないから、あの時の幸せな時間を過ごした指輪をあげてほしいの。

功さんが、これからも幸せであるだめにもね」




「―………」