「昌さん、久しぶり」

「おう。元気そうじゃん」

「うん、元気よ」

明るい笑いから少し伺うような表情を混ぜた昌さんが少し声を落として話しだした。

「みんな聞きにくいから……」

「ん?なに?」

「えっと、まあ、お前ら別れたってきいたけど」

「ハハ…そうだよ」

「ま、それはいいんだけど。
優のことって、歌織の前では禁句なわけ?」

「ん?どういうこと?」

「えーと、なんていうか、

例えば、今日みたいにちょっと会ったときに、優のやつの話とかしない方がいいか?
って優が来たら気まずい?」

「え?大丈夫よ。

ってか、家の繋がりで会うこともあるかも、でしょ?

会いたくないこともないし、都合つけてまで会おうとはしないと思うけどね」

「じゃ、お前のせいで優が荒れてるとしたら?」

目を見開いて昌さんを見た。

「えー?それはないでしょ?
だいたい、そんなの私のせいにされても困るし、そんな馬鹿な優さんじゃないでしょ?」

「荒れてるとしたら、ってのは嘘だけど、また、偶然でも会ったら喋るのか?」

「うん。大丈夫。
なんか聞いちゃいけないことでもあるなら、喋りにくいけど、私は何も変わらないよ?」

「そうだよな?

いや、引き留めてごめん。

そう、俺、美容師の専門学校受けるんだ。秋に受験する。
2年通って国家試験を受けて、それからが本当の修行中の身分。

よろしくね、歌織さん?」

「あ、ついに進路の話ね?
末長くよろしくね、前橋さんの息子さん」


変な感じ~と笑いあって、コンビニを出て、それぞれの帰路についた。