「行こうか」

私の背中をポンポンと叩く。

うん

頷いて、背中の手を離した。


ちょっと照れ笑いをしながら、手を繋いで玄関へいく。

優さんが靴を履くのをみながら、

「私、実は、ほとんど料理できないの」

と、苦笑いで言うと、ニヤッと笑いながら


「そうだろうな。

お前、結構お嬢さんだろ?」


苦笑いのまま、否定も肯定もしなかった。

私の帰る方向に行けば、熊野という、大きな家がある。
もちろん祖母の家だ。

もしかしたら見に行ったのかもしれない。

まだ、家のことは、

言えない。