玄関を入り靴を脱いで揃える。

廊下を進むと狭くなく広すぎることもない、それでいてダークブラウンとベージュで統一され落ち着いたリビング。


「えーと、ご家族は?」

と手土産も持たず来てしまったことを後悔しながら聞いた。

「え?あ、俺、独り暮らし。
ってか、このマンション親父のだから。
怪しい商売じゃねーよ?」

へぇ?

親父のマンションて。
独り暮らしって。

多分、身元は確かなんだろう、と思い

「すごいね」

と返事する。

ソファーに座ってな、とキッチンに入り冷蔵庫からペットボトルを2本持って私の隣に座った優さん。

うーん、何を喋っていいか分からない

と変な緊張感。


「どうした?」


と聞かれても、緊張してますとは、言えない。

何も知らないから会話の糸口もない。

とりあえずペットボトルの蓋を開けて、水を一口飲んだ。