見慣れた道から離れ、着いたのはモダンな和風の暖簾がかかるお店の前。


「ここが優さんの家?」

「ククク…いや、ただ食べに来ただけ。
残念ながらうちは料理屋じゃない」

「あ、そうなんだ。って笑わなくていいじゃない」

「いや、歌織、ビックリしてる顔が…」

「うるさい!もう、お腹減った!」


変顔になってたらしく、笑う優さんにドキドキしながら言うと、手を引いて店に連れていってくれた。


「いらっしゃい。
…あ、優!…えっと彼女さん?
こんにちは。どーぞどーぞ」


とカウンター席をすすめられ座ると、キレイな女将さんが、厨房の方に

優が彼女と来たわよ~

と声をかけている。

へ?わたし?

と思って優さんをみると、

「うるせ~な」

とウンザリしたような顔で不機嫌な声。

照れてる?

フフっと笑っていると

「注文聞けよ!」

と言う優さんに、はいはい、と笑顔で戻って来る女将さん。

「今日のおすすめはサバなんだけどね。塩焼きか煮付けよ」

と言うと

「俺は煮付け」
「私は、塩焼きでおねがいします」

「聞こえた?」

と厨房に声をかけると、はいよ、と男の人の声がする。

にっこり笑った女将さんにおしぼりとお水をもらい、優さんに、やるわね~と言っている。

「彼女さん?名前は?」

「歌織です」

「歌織ちゃんね。

優は小さいときからこの店によく来てるんだけど、その頃は私の両親がやっててね、私は2代目。
去年両親は引退して改装して今のお店があるの。

両親は田舎に移って、またお店やってるのよ」


店のインテリアも和モダンで床の間風に花が飾ってあり、丸い窓に障子があり、おしゃれな雰囲気である。

優さんを小さいときから知ってる人。

何だかんだと大切にしてきた関係なんだろうな。

そこに連れてきてくれたことが嬉しかった。