「……まだ言ってない。
名前のことも言ったら、きっとどこかで繋がってるから。
あの、昌さんはお姉ちゃんのことも知ってるの?」
「……ああ、そりゃな。大変だったな」
顔を歪めて昌さんが言う。
「お願い。誰にも言わないで。
まだ、言えないの、お願い」
必死だった。
「わかったよ。でも、いずれはバレるよ、きっと。
でも、俺からは言わないよ。
とりあえず俺は、これからも確実に繋がるから、よろしくな
とはいっても歌織ちゃんの鬘や頭を触れるのはまだまだ先の話だけどな」
イチゴミルクを渡されて、キッチンを出た。
驚いてる気持ちを落ち着けようと、トイレに行く。
鏡の中の自分の顔は、強張っていた。
目をきつく閉じてから笑顔を作り、いつも通りに過ごした。
家に帰って、改めて昌さんとの意外な繋がりを考えた。
手伝いで行った日舞の発表会の客席にいたのも、あの真剣な眼差しも、納得がいった。