家に戻り、仏壇に線香をたてた。
「唯歌」
兄が呟く。
普段しんみりしない兄の呟きが、 何か心に響く。
一緒に、絡み合いながら、同じ時代を新しい家族と共に生きていくはずだった、私の姉の唯歌。
姉をはねた人は、社会的な裁判を終えた後、それでも罪の意識をもって生きていく。
責めながら生きていく私達遺族、でも、きっと責め切れない。
あの時ちゃんと運転していれば、
あの時、あの道を通らなければ。
何もかも
意思を越えた運命があるように思う。
楽しいはずの将来が、散った。
それは、姉を知る人の心に、傷になり、癒えることは、ないのだ。