5月下旬になり、日本舞踊の発表会を週末に控え、ちょっと焦っている日も、なんとなく優さんと喋ったあとはリラックス出来てる気がする。


コンビニで春菜たちと離れ、お菓子を選んでいると、優さんが来て


「週末暇か?」


と聞いてきた。


「んー、今週末は駄目なの。
来週からは大分楽になるんだけどね~。」

「発表会みたいなもんか?」

「そう」

「じゃ、来週末、空けとけ」



それだけ言うと、また私のかごを取り上げレジに行ってしまった。

唖然とした。

それだけ?

ん?デートに誘って欲しい?
ん?連絡先聞きたい?


わたし?そうなの?


なんだかうまく言えない気持ち。
心から暖まるような、舞台の緊張感とは違うドキドキ。
近くにいるだけで、嬉しくなる。


もっと喋りたい
まるで、欲求不満みたいじゃない。


と、かごを取られたことをおもいだした。


あわてて優さんを追いかけレジに行くと、もう支払っていた。


「わ、ごめんなさい。
お金払うよ?」

と言っても受け付けてくれず、コンビニの袋を渡された。


「連絡先、聞いていいか?」


いつもより低くて小さな声だったけど嬉しかった。

ラインを交換して、


「後で連絡先入れるから登録しろよ」


と、微笑みながら言った優さんに、胸の辺りが、キュッとなり、顔が少し熱くなった。


家に向かいながら、さっきの優さんの笑顔を思い出して、また心地よいドキドキに、顔がにやける。



―――笑ったよね。


目が優しく細くなる。
ちょっとイメージ変わってかわいい――


自転車で坂を上がりながら思い出していた。