今朝もバタバタとしながら、家で着付けをして、千奈美の家の最寄り駅まで送ってもらう。
千奈美の家は、私の家の最寄り駅から1駅である。
決して遠くはない。
夏の日差しの中、和服で歩くのはキツいが、これも立ち振舞い、佇まいの練習である。
洋服の時のように、闊歩できないし、道行く人が時々じっと見られることで恥じないように、と自分を律する。
ある意味修行だ、と思う。
久しぶりに千奈美の家に向かう。
駅から歩いてまっすぐ進む道のT字路。
あまり、気にしてなかったが、何となく最近見たことある風景、と気付く。
――優さんのマンションの近く?
何度か来た優さんのマンションから歩いて夕食に向かった時、チラリと目に入った、建築中のマンションの工事現場。
――あの工事中のマンションってこれ?
マンション名が横断幕のように張られている。
直進する前に右手に折れる道の先をみる。
――あ。
確かに優さんの住むマンションがある。
――いつもバイクで来てたから、駅とか知らなかった。
偶然でも会いませんように。
と、願った。