その日の昼休み。
幼馴染みで同じクラスの林千奈美と神野美輝と一緒にお弁当を持って日当たりの良い中庭にきていた。
二人は両親を含めて家族ぐるみで付き合いがあるので、名前のことや家のことも知っている。
お弁当を食べ始めると、受験のことを2人に言うと決めていた私は、話始めた。
「私、凌凛館を受験するの」
2人は私を見つめ固まった。
「ご、ごめん、ビックリさせた?
そんなにかたまらないでよ」
苦笑いで言うと、色白でふっくらした輪郭の千奈美が丸い目を見開いて
「ほんとなの?」
驚きを隠せないまま早口で聞いた。
「うん、両親にも言ったし、今日進路希望用紙を久保先生にも出したよ。
ちょっとビックリしたみたいだけどなんにも言われなかった。
来週懇談があるからね~」
そう言うと千奈美は
「え~、ずっと歌織と一緒にいると思ってたのに。
歌織がいない学校なんて想像できないわ。
ねぇ美輝?」
と美輝に問いかける。
「うん。
で?歌織は芸術科を受けるの?」
「うん」
肯定すると、美輝が続けた。
「そっか。サイタグループの一族で芸術の道に進む人はあんまりいないんじゃない?
でも、大企業だけど芸術にも力をいれてるわよね?
でも、歌織はそこで重役として働くことになるか、政略結婚とかもありかな、と思ってたけど、おば様の方の血筋だったのね。
もし合格して凌凛館に行くことになったら、寂しくなるけど、連絡はちょうだいね」
「アハハ、結婚とかはわからないけど、とりあえず受験よね。落ちたらここに通うから。
って、美輝~、もし合格したらってなんかひどくない?」
そーかな~?と言う美輝と笑っていると、千奈美が
「不合格になればいいのか~。
祈ってしまいそ~」
と真顔で言うので、
「「こら!」」
と二人で言い、笑いあって昼休みを過ごした。