「お父様、お母様、相談があるの。
ずっと考えていたのだけど」


両親が私をみる。


「私、凌凛館高校(リョウリンカンコウコウ)の芸術科に行きたいの。


外部受験を許してください」


一息に喋った。

驚いた顔で私を見つめ固まった両親。


沈黙だった。


私は、両親の返事が無いことに焦る。


「認めてあげたら?」


両親も私も声がした方をみた。


リビングの入り口に立ったまま、姉はちょっと笑いながら

「わかってるんでしょ?歌織は芸事が好きって。

私は、すべての習い事を高校卒業でやめるわ。
そして、将来はサイタグループで働きたい。
熊野のおばあ様の血を確実にひいたのは歌織だわ。
凌凛館なら、芸術科はピカイチだし、普通科も問題ないでしょ?」

姉の唯歌の発言にビックリした。

父はちょっと微笑みながら優しく声を発した。

「私は、二人とも桜輪学園を高等部まで行って欲しかった。
女の子を持った時に親として夢見たことだったから、選択肢もあたえないまま、幼稚園から行かせたのだよ。

でも、唯歌のいうとおり、歌織は日本舞踊も琴もピアノも好きで稽古も頑張っているのは認めている。

歌織はどうしても行きたいのかい?」


子どもが女の子と分かったとき時からの夢。
父の気持ちを初めて聞いた。

それでも自分の気持ちを変えることはできない私がいる。


「どうしても行きたいの。

凌凛館なら、芸術科に音楽専攻以外の人もいる。

それでいて芸術全般と音楽の専門知識も勉強できて、好きな器楽も自由に選択できる。

どうしても行きたいの。

お願い!」

必死だった。

そんな私の言葉に父と母も顔を見合わせた。