…怖い。




やっぱり私、無理だよ。




声を聞かせるなんて無理。






柊くんが死ぬなんてやだ。








「俺が死んでも、高宮さんには笑顔で美しい女性でいてほしいんだ。



逃げてばかりじゃダメだと思うんだ」









そう言って、私を真剣な面持ちで見つめる柊くん。










“逃げてばかりじゃダメだと思うんだ”




彼の言葉が、私の背中を押した――。


















ゆっくりと口を開いて、息を吸い込む。






そして、息を吐くと同時に、






「…………………………―――――――私だって…………っ…」







か細い声が出た。








「……………私だって、………――――――愛し…、てた……」








私だって愛してたんだよ。










「………柊くんのこと、……胸が張り裂けそうなくらい、……っ、好き、だった…」








涙が止まらない。







「……………死んじゃうなんて、―――やだ、…っ、死なないで…、」







来年も一緒に花火見ようって約束したじゃん。












その時。




視界が真っ暗になった。




鼻先をかすめるのは、柊くんの匂い。







顔を上げると、柊くんに抱きしめられていたことに気がついた。







目の前には柊くんの顔。







「ごめん。…俺、頑張って生きるから。





高宮さんの言葉、ちゃんと伝わったよ」







柊くんは泣かずに、私を見て微笑んでくれた。




その笑顔があたたかくて。



涙が止まらなかった―――。









「愛してる」



「私も、」





今度は自然と声が出た。





もう、何も怖くない――――。











柊くんと出逢えてよかった。