「でも、想定外の事は何もなかったな。最初から自分の手の内を全てさらけ出して真っ正面からくるとは。甘ちゃんの御曹司さまは正攻法しか思いつかないらしい」

ククッと笑い声を上げた樹くんは初めて見る表情だ。ゾッとするほど冷たいのに、目を逸らさせないほど綺麗。

「それで、柚珠奈は話を聞いてどう思った?」

「驚いた、かな。驚き過ぎて、正直きちんと考えられなかったの。だって、理一君を男性として見たこともなかったし、想像した事さえなかったから」

「でも、数日前には好意を持たれてるかもって焦ってただろ?それでも?」

「好意を持たれてるかもって思った時だって、ありえないと思ったから樹くんに話聞いてもらったんじゃない。自分が理一君を好きになるなんて、どうしたって想像出来ないよ」

「じゃあ、悩む必要はないね。きっぱり断ればいい。花村のおじさん達も賛成はしてないんだろ?」

「積極的に賛成はしないけど反対もあるしないって。樹くんに相談して、よく考えなさいって言われた」

「ふふっ。じゃあほとんど反対って事だね。俺はもちろん完全に反対だし、理一君を阻む準備もある」