アルフレッドは、有無を言わさぬ迫力で迫る。

捕まえて歩くとは、いったいどんな状態だろうか。

シルディーヌが素敵な店を見つけてふらふらと近寄れば、勝手に行くなとばかりに襟首をつままれて、そのまま獲物のように運ばれるということだろうか。

すぐに、いやいや有り得ないことだと否定するも、ドSなアルフレッドならやりかねないと思いなおす。


「飛び回ったりしないわ。素敵なお店を見つけたら、ちゃんとアルフに言うもの」

「いや、それだけじゃ駄目だ。お前、王都の商店街の賑わいをなめるなよ?」


真剣な表情のアルフレッドに強く促され、シルディーヌはやむなく腕に手を伸ばした。

途中で必要ないことに気づけば、手を離せばいいのだ。

そっと腕に手を回せば、アルフレッドの大きな手のひらが重ねられて、ぐっと押さえつけられた。


「道では絶対に手を離すなよ。まず、どこに行きたいんだ? 紅茶店か、雨具店か?」


さっきまでの強い語調と変わり、今の質問はとても優しく感じる。

ほんの数分のやり取りの中で、アルフレッドはシルディーヌにいろんな表情を見せてくる。

黒龍殿では、たいていワイバーンな顔をしているのに。

これは、プライベートの開放感によるものだろうか……。


「えっと、そうね……まず、どんなお店があるのか、ひとまわりしたいわ」