正門から出て橋のたもとに向かうシルディーヌの瞳に、ブルーのフロックコートを着た背の高い若者の姿が映った。

広い川に渡された大きな橋は、商店街への入口のひとつになっているため、大変人通りが多い。

若者は橋のたもとに立っており、通る人波でときおり見え隠れしているが、頭一つ抜けている巨大さは遠目でもすぐに分かる、アルフレッドだ。

大変見目麗しいために人目をひいているようだが、行き交う老いも若きも避けるように遠ざかり、急ぎ足で橋を渡っているよう。

そんな中で、華やいだ様子の若い女性のふたり組みがアルフレッドに近づこうとしている。

どうやら話しかけようとしているみたいだが、目が合うとビクッと体を震わせて立ち止まり、ふたりでしっかり手を繫いで逃げるように去って行った。

それを見ていたシルディーヌは、密かに嘆息した。

無理もない。プラチナブロンドの髪を風になびかせて立つ姿は、一見とてもスマートで素敵な紳士。

だが仁王立ちで腕組みをしており、視線だけでネズミの息の根を止めそうな迫力を放っているのだ。

話しかけようとした女性ふたり組には、「勇気がある!」と褒めてあげたい気分になる。


間もなく道を歩いているシルディーヌを見つけた様子のアルフレッドだが、それでもたいそう不機嫌そうにしている。

もしやものすごい遅刻をしているのだろうか。

むっすり不機嫌オーラ全開のアルフレッドが一緒では、楽しめるものも楽しめない。